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令和3年分確定申告特集③

 前回に引き続き令和3年分確定申告に関しての内容をお伝えさせていただきます。今回は上場株式等の配当所得の申告について、所得税と住民税で異なる申告方法を選択する場合の手続きに関して解説します。

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(1)配当等の課税方法の選択手続の簡便化

 上場株式等に係る配当所得の課税方法には、「総合課税」、「申告分離課税」、「確定申告不要」の3つがあり、納税者が好きなように課税方法を選択できます。また、所得税と住民税で異なる課税方法を選択することもできます。

 令和2年分の確定申告までは、所得税では「総合課税」または「申告分離課税」で申告し、住民税では「確定申告不要」を選択する場合は、住民税の納税通知書が送付されてくる前にお住いの自治体に「確定申告不要」と記載した住民税の申告書を提出することが必要でした。

 しかし、令和3年分の確定申告から、下記の画像にあるように所得税の確定申告書上で住民税の課税方法に関して「確定申告不要」を選択することができるようになり、住民税の申告書を別途提出する必要がなくなりました。

 

(令和3年分所得税確定申告書第二表より抜粋)

 

(2)課税方法による有利選択

 上場株式等の配当所得に係る所得税・住民税は、配当の受取時に所得税等15.315%・住民税5%の税率で源泉徴収され、原則として配当所得の金額の多寡にかかわらず申告する必要はありません。

 しかし、総合課税による確定申告をして配当控除(※)の適用を受けると、トータルの税負担が少なくなる場合があります。

 ※配当控除とは、配当所得に一定の控除率を乗じた金額を税額から差し引く税額控除です。国内株式の配当は、通常、法人税が課された後の利益を株主に分配するものですが、ここにさらに所得税が課されると二重課税になってしまいます。 これを排除する意味で、税額控除として設けられたものが配当控除です。

配当控除の適用要件には、確定申告が必要であることや外国法人からの配当等は対象外となることなどの要件があるため、適用を受ける場合には適用の可否を確認する必要があります。

 配当控除を受けるためには総合課税で申告する必要があるため、納税者ごとに適用される税率が異なり、申告した際の有利不利が分かれます。具体的には下記の表をご参照ください。

 

(東京税理士会研修資料「令和3年分 確定申告における留意点」より抜粋)

 

(3)配当を申告する場合の注意点

 上場株式等の配当等は「確定申告不要」を選択すれば確定申告する必要はないですが、上記の表のとおり、適用される所得税率によってはあえて確定申告することで有利になることがあります。

 しかし、本来は申告が不要な所得をあえて申告することになるため、所得を基準にその適用が定められている制度に影響を及ぼすことがあります。

 例えば、合計所得金額を基準に適用可否が決まってくる配偶者控除や扶養控除、寡婦控除やひとり親控除などを適用している場合には、それらを考慮したうえで配当所得を申告するかどうかを検討する必要があります。また、住宅ローン控除や住宅取得等資金の贈与の特例などもその適用を受ける年分の合計所得金額が適用要件になっているため注意が必要です。

(4)課税方法の選択は総合的な判断が必要

 上場株式等に係る配当所得の課税方法には「総合課税」、「申告分離課税」、「確定申告不要」の3つがあり、その選択により有利不利がわかれますが、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の適用がある場合には、そちらも併せて課税方法を検討する必要があります。

 具体的には、過年度からの上場株式等の譲渡損失の繰越がある場合や、複数の特定口座間で配当所得(または上場株式等の譲渡益)と上場株式等の譲渡損失がある場合には、「申告分離課税」を選択し確定申告することで損益通算することができ、配当を受ける際に源泉徴収されていた税額が還付されるケースがあります。

 (注)ひとつの「源泉徴収ありの特定口座」内では、その年分の上場株式等の譲渡損失と配当等は自動的に通算されるため、あえて確定申告することは不要になるケースが多いです。

 つまり、上場株式等の譲渡損失がある場合には、配当所得について「総合課税」を選択して配当控除を受けずに、「申告分離課税」を選択して上場株式等の譲渡損失と損益通算させた方が有利になるケースもあるということです。

 「申告分離課税」を選択し上場株式等の譲渡損失を通算させる場合でも合計所得金額に影響があるほか、住民税も「申告分離課税」を選択する場合には後期高齢者医療保険料、国民健康保険料、介護保険料などの金額にも影響があるため、課税方法を選択する場合は総合的な判断が必要です。

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