290946467

令和5年度税制改正大綱 贈与税の改正について

令和5年度の税制改正大綱が12月16日に公表されました。

ここ数年間その内容が注目されていた「贈与税と相続税の一体課税」に関しては、暦年贈与制度は生前贈与加算の対象期間を延長するなど引き締めの方向となり、相続時精算課税制度は現行の基礎控除とは「別途」基礎控除を設けるなど緩和の方向となりました。

そもそもこの改正が行われる理由としては、お金がある人は暦年贈与制度をうまく利用し相続税の節税ができますが、お金が無い人はそれができないため、この不公平を是正するためです。

一方で、政府としては高齢世代から若年層への資産の移転を促し経済を活性化させたいため、相続時精算課税制度は使いやすくするための改正となっています。

教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度についても改正があるため、主な改正点を解説します。

ページコンテンツ

 

(1)暦年贈与制度の主な改正点

 

【改正前】

・相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から財産を贈与により取得した場合には、その贈与により取得した財産の価額を相続財産に加算する。

【改正後】

・相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前7年以内に被相続人から財産を贈与により取得した場合には、その贈与により取得した財産の価額を相続財産に加算する。

・相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産は、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額を加算する。つまり、相続開始前3年超7年以内に取得した総額100万円以内の財産は加算の対象外となり、3年以内に取得した財産は金額にかかわらず加算の対象となります。

・令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。

 

(2)相続時精算課税制度の主な改正点

 

【改正前】

・相続時精算課税制度を選択した場合、110万円以下の贈与をした場合であっても、申告が必要となる。

・相続時精算課税制度を選択した場合、贈与により取得したすべての財産についてその贈与時の財産の価額を相続財産に加算する。

【改正後】

・相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税には、現行の基礎控除とは別途、基礎控除110万円を控除できる。

・特定贈与者の死亡により相続税の課税価格に加算される贈与財産の価額は、上記の基礎控除を控除した後の残額とする。

・令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。

 

(3)その他の贈与の主な改正点

 

①直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

 

【改正前】

・適用期限は令和5年3月31日まで

・教育資金管理契約中に贈与者が死亡した場合、管理残額を贈与者から相続等により取得したものとみなす。ただし、贈与者の死亡の日において、受贈者が23歳未満の場合などを除く。

・受贈者が30歳に達した場合等の教育資金管理契約終了時に、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合には、「特例税率」により贈与税が課税される。

【改正後】

・適用期限は令和8年3月31日まで(3年間延長)

・教育資金管理契約中に贈与者が死亡した場合、管理残額を贈与者から相続等により取得したものとみなす。ただし、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、その死亡の日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を当該受贈者が相続等により取得したものとみなす。

・受贈者が30歳に達した場合等の教育資金管理契約終了時に、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合には、「一般税率」により贈与税が課税される。

・上記の改正は令和5年4月1日以後の贈与から適用する。

 

②直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

 

【改正前】

・適用期限は令和5年3月31日まで

・受贈者が50歳に達した場合等の契約終了時において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課される時は、「特例税率」により贈与税が課される。

【改正後】

・適用期限は令和7年3月31日まで(2年間延長)

・受贈者が50歳に達した場合等の契約終了時において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課される時は、「一般税率」により贈与税が課される。

・上記の改正は令和5年4月1日以後の贈与から適用する。

 

(4)まとめ

「贈与税と相続税の一体課税」に関してはやはり改正となりました。雑誌などでも記事にされるように、今後はかけこみ贈与がさらに増えると見込まれます。ただし、実際に贈与を行う際にはいくつかの注意点があるため、過去に記事にしております内容(生前贈与と相続税の税負担について)を再度ご確認いただければと思います。また、税制改正の詳細につきましては今後情報が出てくるため、注意が必要です。

最近の記事

PAGE TOP
PAGE TOP