290946467

インボイス制度に関してよくあるご質問③

令和5年10月1日からインボイス制度が開始されました。国税庁が公表しているQ&Aのうち、実務をしていてよくいただくご質問を抜粋し、解説致します。

今回は適格請求書の交付義務が免除される取引について解説します。なお、「少額特例」に関しては次回解説致します。

(適格請求書の交付義務が免除される取引)

問41 適格請求書の交付が困難な取引として、交付義務が免除される取引にはどのようなものがありますか。【令和5年10月改訂】

【答】 適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)からの求めに応じて適格請求書の交付義務が課されています(消法57の4①)。 ただし、次の取引は、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除されます(消令70の9②)。

① 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送(以下「公共交通機関特例」といいます。)

② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)

③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)

④ 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等(以下「自動販売機特例」といいます。)

⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

上記の具体的な説明として、下記ご紹介致します。

①の「公共交通機関特例」は、Q&Aの問43に下記の回答があるため下記ご紹介致します。

問43 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、どのような単位で判定するのですか。【令和5年10月改訂】

この3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します(基通1-8-12)。したがって、1商品(切符1枚)ごとの金額や、月まとめ等の金額で判定することにはなりません。

【具体例】 東京‐新大阪間の新幹線の大人運賃が13,000円であり、4人分の運送役務の提供を行う場合には、4人分の52,000円で判定することとなります。

1回の取引ごとに判定されるため、2回に分けて購入すればいいのではと疑問が湧きますが、1回の取引かどうかは常識的な範囲内で判断されるものと考えられます。なお、問44で「特急料金、急行料金及び寝台料金は、旅客の運送に直接的に附帯する対価として、公共交通機関特例の対象となります。」と回答があるため、ご注意ください。

また、タクシー料金に関しては、「公共交通機関特例」の対象外となるため、注意が必要です。

④の「自動販売機特例」は、Q&Aの問47に下記の回答があるため下記ご紹介致します。

(自動販売機及び自動サービス機の範囲)

問47 3万円未満の自動販売機や自動サービス機による商品の販売等は、適格請求書の交付義務が免除されるそうですが、具体的にはどのようなものが該当しますか。【令和5年10月改訂】

【答】 適格請求書の交付義務が免除される自動販売機特例の対象となる自動販売機や自動サービス機とは、代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで、代金の受領と資産の譲渡等が完結するものをいいます(基通1-8-14)。

したがって、例えば、自動販売機による飲食料品の販売のほか、コインロッカーやコインランドリー等によるサービス、金融機関のATMによる手数料を対価とする入出金サービスや振込サービスのように機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが該当することとなります。

なお、小売店内に設置されたセルフレジを通じた販売のように機械装置により単に精算が行われているだけのもの、コインパーキングや自動券売機のように代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われるものの資産の譲渡等は別途行われるようなもの及びネットバンキングのように機械装置で資産の譲渡等が行われないものは、自動販売機や自動サービス機による商品の販売等に含まれません。

(参考) コインパーキングは、適格請求書の交付義務が免除される自動販売機特例の対象とはなりませんが、駐車場業(不特定かつ多数の者に対するもの)に該当することから、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することができます。

実務上よく出てくるのは、自動販売機、ATMの振込明細、コインパーキング、ネットバンキングあたりでしょうか。ネットバンキングに関しては交付義務を免除してもよさそうな気がしますが、現状では交付義務は免除されないこととなっています。各金融機関ごとに対応は異なりますが、画面上の振込明細等を印刷等して保存する必要があると考えられます。

適格請求書の交付義務の免除と裏返しですが、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められるものとして、Q&Aの問104で「従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)」が明記されています。出張手当や通勤手当等は請求書をもらっていないと思うため、今まで通りの処理で問題ないです。

最近の記事

PAGE TOP
PAGE TOP